食堂かたつむり
『トルコ料理店でのアルバイトを終えて戻ると、部屋の中が空っぽになっていた。もぬけの殻だった。テレビも洗濯機も冷蔵庫も、蛍光灯もカーテンも玄関マットも、あらゆるものが消えている。』というあり得ない状況で倫子は声を失った。唯一残っていたぬか床の壺を持って深夜バスに乗り中学を卒業して以来帰っていなかったふるさとに戻る。
実家に戻った倫子は「おかん」から物置小屋として使っている建物を借り食堂かたつむりを始める。
一日一組だけの、ちょっと変わった食堂。倫子が事前にお客とのやりとりの中でメニューを考え提供する…
熊さん、お妾さん、桃ちゃん、跡取りさん、梢ちゃんのウサギ…みな倫子の作る料理をきっかけに幸せをつかんでいく。
死をもって料理の素材となってくれた野菜、肉。それを無駄にすることなく料理する。
『生きることは食べること』そう思わせてくれるお話だった。