アイスクリン強し

明治のはじめのお話、帝都に『風琴屋』という西洋菓子屋をかまえる真次郎と沙羅、長瀬巡査を取り巻く物語。沙羅と真次郎の関係やら沙羅の父、小泉琢磨との掛け合いが小気味よく書かれている。

例えば目の前のワッフルスは、出来たて熱々が美味い。だが己の人生からは、そんな若さと熱さが、既になくなって来ているのかもしれない。
「そう思うことが、怖かったのだろうか」
傍目にはいくら大金持ちになったように見えても、若かった時代と同じように、己の芯の部分に危うさを抱えているのが分かる。いい大人になれば、迷わないものよと思っていた。嫌らしいほどに強い『大人』になるものだと、勝手にそう思っていたのだ。
「だが実際年を喰ってみれば、なぁ」
珍しくも少し力なく言う御当主に向け、真次郎が首を傾げる。
「菓子には、日を置いた方が美味しいものが、沢山ありますよ。出来たてばかりが菓子じゃありません」
(ワッフルス熱し)から

“手紙を受け取られし御仁方へ”の謎解きも共感できる。ボクなら真次郎は沙羅と一緒に…なんていうのかと思っていたのだけど、やっぱりそういう展開にはならず、真次郎は草食系の走りかっ


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アイスクリン強し
畠中 恵
講談社 2008-10-21
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by G-Tools , 2009/02/24