なぜ英国のホテルは、世界で最も愛されるのか

 Incognito(訳:お忍び)
Incognito」という言葉が英国の一流ホテルでは使われる。ここでわざわざ「一流」と断るのは、超VIPの泊まらないホテルには無縁の言葉だからだ。
 大物VIPの秘書やマネジャーから「incognito」の依頼があると、まずオペレーター(英国ではswitchboard、米国ではtelephone operator)はそのゲストへのあらゆる着信電話番号をストップする。もちろん、電話の主には「そのようなお名前はコンピューターに見当たりませんが…」とウソを告げることとなる。もし、秘書が電話を受けるという場合には、すべての電話を秘書の部屋へ転送する。
 さらに、フロント(reception)など宿泊客に関する問い合わせがありそうな部署にもコンピュータ画面に「incognito」の表示が出て箝口令が徹底される。かくして名のあるゲストのプライバシーは守られるというわけだ。
 なお、「お忍び」のゲストは最上級のスイートに泊まるのが普通である。もしスタンダードルームに泊まるゲストからインコグニトーを要求されたら、泊まり逃げされぬ間に警察に通報することだ。

なぜ英国のホテルは、世界で最も愛されるのか―ホテルと英国がわかる50のキーワード

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